フリダシニモドル

いろいろためになるものやつまらないものなど

ナック パイロット作品大系

「スーパータロム」「透明少年探偵アキラ」「おこれ!!ノンクロ」以外にも実は色々ある、ナック(現:ICHI)のパイロット作品群のアレコレをまとめてみた記事。
(※新しい情報を見つけるとたまにコッソリ追記してます。)

・テレビ放送が実現したもの
・テレビ放送が実現しなかったもの
・企画のみまたは不明
の大きく3つに分けて紹介。


○テレビ放送が実現したもの
いじわるばあさん(1970年)
川崎市民ミュージアムパイロット台本が所蔵されているほか、ICHIの倉庫内にフィルムが現存していることも確認できる。
パイロット台本によると、「ただまるもうけの巻(脚本:鈴木良武)」「ハワイ旅行の巻(脚本:吉田進)」という話が作られていたようだ。また表紙に電通の名前が確認できる。
前者はTV放送版の13話Aパート、後者は11話Aパートに流用されたらしき痕跡がある。

正義を愛する者 月光仮面(1972年)

KSSから発売された、実写版の月光仮面 マンモス・コング編 LD-BOXに収録。
またビクターから発売されたマンモス・コング篇のDVD-BOX(型番:VBD-5003)にも収録されているらしいが未確認。
そのほかタワーレコードの情報( )によると、ハミングから出たどくろ仮面篇(HUM-306)その復讐に手を出すな篇(HUM-304)のDVD-BOXにも収録されているらしい?(どくろ仮面篇のほうは、また別のパイロットアニメ…?)。ただしパッケージやAmazonの特典情報には書かれておらず、本当に収録されてるのかよく分かりません。

「謎のゆうれいギャング」という副題が付いている。
月光仮面やドグマ博士のデザイン、五郎八やシゲルをはじめとした一部キャラクターの声優がTV放送版と異なる。
また主題歌は三ツ木清隆氏が歌唱しており、こちらはビクターからレコードも発売されている
三ツ木氏が主題歌を担当する至った経緯としては、月光仮面の原作者である川内康範氏の事務所に当時、三ツ木氏が所属していた繋がりからによる。
そのほか週刊TVガイド 昭和46年9月10日号と11月19日号に、本作に関する記事がある。
この記事によると、1971年9月時点で既にパイロット版制作に着手していたことや、三ツ木版主題歌がアニメに先駆けてリリースされたものであったことが分かる。
また記事の掲載当時、アニメ版を作りたいナック&川内康範氏側と、実写でのリメイクを画策する宣弘社との間で若干揉めていたことも伺える。


アストロガンガー(1972年)
「アストロマン」というタイトルのパイロット版と思わしき16mmフィルム(プリント)が、ヤフオク!に出品されたことがある。落札者と思われる人物のブログ記事が存在。
週刊TVガイド 昭和47年8月25日号の記事にてアストロマンの名前が登場したことがある。
そのほか、TV放送版とガンガーの配色が異なる本作のセル画と思わしきものや、「アストロンジャンボ」というタイトルの試作台本がヤフオクに出品されていたことがある。
こちらもパイロット版のものかは不明だが、ガンガーとカンタローの配色とデザインが異なるイラストが、冒険王 1972年10月号に掲載されたことがある。先述のセル画では赤を基調とした配色だったガンガーが、こちらではグレーを基調とした配色になっている。

グロイザーX(1976年)
元々は「ゴッドタイタン」というタイトルのオリジナル企画で、キャラクターデザインを田中英二氏、メカニックデザイン鈴木孝夫氏が担当していた(出典不明
使われなかったデザインは次の企画書「空爆ロボダイバトル」に流用された。
パイロット版が制作されたかは不明。

バトルホーク(1976年)※実写特撮
ICHIの倉庫内に本作のパイロットフィルムらしきものが現存しているのが確認できる。
関連は不明だが、テレビマガジン 1976年10月号にTV放送版と異なる衣装のグラビアが掲載されたことがある。

星の王子さま プチ・プランス(1978年)
ICHIの倉庫内に本作のパイロットフィルムらしきものが現存しているのが確認できる。

サイコアーマー ゴーバリアン(1983年)
ICHIの倉庫内に本作のパイロットフィルムらしきものが現存しているのが確認できる。

ドリトル先生物語(1984年)
ICHIの倉庫内に本作のパイロットフィルムらしきものが現存しているのが確認できる。



○テレビ放送が実現しなかったもの
スーパータロム(1972年秋頃)

ニューシネマジャパンから発売された「アニメの王国 チャージマン研」に収録。
制作担当として関わった真佐美ジュン氏(下崎 闊)による本作を回顧したブログ記事が存在。
このブログ記事では「西野清市(聖市)社長が『スーパータロムで、アトムの夢を引き継ぎたい』と制作担当を依頼「初めは10分の尺の予定だったが、杉山卓氏が演出と作画を担当したこともあり、最終的には23分というTV番組1本分の作品に仕上がってしまった。これにより制作期間も1か月ほどの予定が2か月に、予算も倍以上になってしまい真っ青になった。」といった旨のエピソードが語られている。
また本作のコミカライズが講談社の児童雑誌で掲載されたことがあり、
テレビマガジン(新宅よしみつ/1973年1月~3月号)
たのしい幼稚園(野口竜/1972年12月~不明)
別冊たのしい幼稚園(池原しげと/1973年新年号~不明)
おともだち(野口竜/1973年1月?~不明)

の以上が確認されている。
なお、新宅よしみつ氏によるコミカライズ版は原画が残っているらしく、2011年には「第2回『新つれづれ草』マンガ原画展」にて展示されたこともある模様。
新宅氏によると「連載当時、企画書しか無くストーリーはオリジナルで苦労した」とのこと。


透明少年探偵アキラ(1974年頃?)

ニューシネマジャパンから発売された「アニメの王国 チャージマン研」に収録。
キッズステーションで2012年1月15日に本作のリマスター版が放送されたこともある。
ICHIに企画書が現存してるらしく、それによるとアキラは「体が透明なので普段は人工皮膚を着ている」設定とのこと。
BGMに「正義を愛する者 月光仮面」「流星人間ゾーン」(いずれも三沢郷作曲)のものが流用されている。
チャージマン研!」でお馴染み、劇団近代座の俳優が声をあてている。

のら犬ペスの冒険(1979年頃?)

ニューシネマジャパンから発売された「アニメの王国 ドナルドダック」に収録。
村野守美氏による漫画「ほえろボボ(後にほえろブンブンに改題)」が原作。
ナックでのアニメ化は叶わなかったものの、後に和光プロダクションによってTVアニメ化、マッドハウスによってアニメ映画化がされている。
ペスの声優は野沢雅子、BGMにシンガーズ・スリーの「春を呼ぶ夢」が使用されている。
そのほかICHIの倉庫内に「ボボ」という名のフィルムが現存しているのが確認できる。(但し、中の人曰くのら犬ペスではないですが謎ですとのこと。)
↑との関連は不明だが、早稲田大学演劇博物館には謎の「ほえろボボ」の企画書(1972年 よみうりテレビ)が所蔵されていたりする。

おこれ!!ノンクロ(1980~1982年頃?)

ニューシネマジャパンから発売された「アニメの王国 チャージマン研」に収録。
ICHIの倉庫内に本作のフィルムが現存しているのが確認できるほか、U-maticテープに記録された素材も現存しているのが確認できる。
イメージボード?絵コンテといったものも現存している模様。
そのほか余談ではあるが、「アタッカーYOU!」第3話にノンクロそっくりの犬(名前もノンクロ)が登場したことがある。
また、LINEの「ICHI(旧ナック)50周年記念スタンプ」で使用された図版は、キャラクターデザインが若干異なっている。

がんばれ彦一(1984年頃?)
詳細不明。一部施設に同タイトルの16mmフィルムが所蔵されているのが確認できる。
ICHIの倉庫内に本作のパイロットフィルムらしきものが現存しているのが確認できる。
当時ナックで本作が制作されていたのを記憶している元スタッフのツイートが存在する。

うたまろ(不明)
詳細不明。
ICHIの倉庫内に本作のパイロットフィルムらしきものが現存しているのが確認できる。

ミニ子剣士(不明)
詳細不明。
ICHIの倉庫内に本作のパイロットフィルムらしきものが現存しているのが確認できる。



○企画のみまたは不明
冒険家族 はしれ!ドンキー号(1973年頃)
冒険王 1973年9月~11月号別冊冒険王 1973年9月~1974年1月号に掲載されていた漫画。
作画は二誌ともに、小山田つとむ氏(ダイナミックプロ)が担当。
©︎ナック 宣弘社」の表記や「原作・田中英二」の名前が確認できる。
また予告イラストでは「テレビ化決定!!」の文字がある。

一寸法師の冒険(1974年頃?)

ICHIの中の人曰く、配給会社の作った営業用パンフレットが存在するものの、企画段階でパイロット制作までは進まなかったらしいとのこと。
なお「日本アニメーション映画史」では「㏍さんしんより昭和49年に発売」となっている。
そのほか、視聴覚教育 1975年1月号サンシン社の広告欄に名前が載っている。

笠地蔵(1974年頃?
一寸法師の冒険」と同じく、配給会社の作った営業用パンフレットが存在するものの、企画段階でパイロット制作までは進まなかったらしい。
こちらも同様に視聴覚教育 1975年1月号のサンシン社の広告欄に名前が載っている。

ナック版まんが日本昔ばなし(1975年以前)
アニメディア 1982年1月号の特集記事によると、最初はナックで立案した企画だったものの、スポンサーに決まっていた某製薬会社がチクロの問題で流れてしまったとのこと。
ナックの頃のものかは不明だが、早稲田大学演劇博物館に企画書が所蔵されている。
この企画書によると、当初は「日本の昔ばなし」というタイトルだった模様。
発癌性などが疑われ問題になった人工甘味料日本においては1969年に使用禁止となった。


ナック版一休さん(1975年以前)

アニメディア 1982年1月号の特集記事によると、こちらも最初はナックで立案した企画だったものの、大正製薬から「坊さんが主人公の作品など、縁起が悪い」と断られてしまったとのこと。ICHIにセル画が現存( )している。
ご存知のとおり、この「一休さん」「日本昔ばなし」の企画はのちに他社でアニメ化され…。
ナック内でこの2作は、ツキに見放された代表的な企画とされていたらしい。

空爆ロボダイバトル(1976年頃?)
グロイザーX」の項を参照。

ガンガードラゴン(2005年頃)
「Tokyo Project Gathering」という、実写・アニメ・ゲームなど様々な企画を紹介し、制作や投資を行うパートナーを見つける企画イベントで発表されたもの
同イベントのHPでは、監督を勝間田 具治氏、プロデューサーを戸井田 博史氏が担当していたのが確認できる。
ICHIの中の人曰く、企画書までしか進まなかったとのこと。イメージイラストが現存。
また、タイトルは西野聖市氏が命名。タイトルにある”ガンガー”は「アストロ”ガンガー”」とは無関係なものの、狙ってつけてはいるだろうとのこと。


マーズ・ヤマト(2006年頃)
ICHIにいくつかのデザイン画のみが現存?(



というわけで、今までこの手の情報が一か所にまとまったものが無かったので記事にしてみたのですが、いかがでしたでしょうか?
(ICHI公式やら色んなとこから引用しまくってるので、どっかから怒られないか少しだけ心配…)
とりあえず筆者は「アストロマン」が気になるので、どっか配信か放送かソフト化をタロム。


藤子・F・不二雄大全集未収録の作品(仮)

はじめに
藤子・F・不二雄大全集は藤子F先生が生涯執筆した作品をほぼ網羅した書籍ですが、少ないながらもいくつか収録されていない作品があります。
今回、そんな未収録の作品の中から、いくつか自分が目を通したものを適当に紹介していこうといった記事です。解説も作品の選定も(『名犬タンタン』や『宝島(マンガニカの)』とか入っていなかったり)かなりガバガバですがお許しください。

(収録漏れをどうこう言うつもりではなく、あくまで「こんなのもあるよ」的な紹介記事です。また自分のチェック漏れで、全集や全集特典の類いに収録されているものがあるかもしれないことを先に断っておきます。)
あとネタバレ注意。そのほか人名等は基本的に敬称略。



おそ松・オバQのクイズ絵はがき
初出:週刊少年サンデー 1965年8月1日夏休み増刊号(カット)

『おそ松くん』と『オバケのQ太郎』のそれぞれ4枚セットの付録絵はがき。
「クイズ」と入っているように、はがきの絵が別ページにあるクロスワードクイズのヒントになっていて、解いた答えをこのはがきに書いて応募すると、抽選で豪華賞品が当たる!…といったもの。③の絵はがきは4コマ漫画になっています。
あとすごくどうでもいいツッコミとしては、主人公が犬嫌いなのに目玉賞品が柴犬という…(しかも本人が上機嫌で散歩させている挿絵付き)
確認できた限りでは、次の年の1966年夏休み増刊号でも同様の企画が行われています。
Neo Utopia Vol.51 裏表紙にカラーで再録あり。


オバQの軟着陸
初出:朝日新聞(夕刊) 1966年2月4日付(1コマカット)

ソ連の月ロケット「月9号」軟着陸のニュースに関連して、朝日新聞で掲載された『この月に手が届いた』という記事に寄せられたイラスト。他にも星新一(小説家)、村山定男(国立天文博物館 天文主任)、原田光夫(日本宇宙協会会長)、真野毅(国際空法協会日本委員 元最高判事)も文章を寄稿。(※いずれも当時)
内容はいわゆる時事ネタに被せた風刺画的なもので、ボーイズライフで掲載されていた『オバQのオトボケ戯評』と似ています。



オバQの郵便屋さん
初出:郵政 1966年7月 臨時増刊 若い郵政(絵と文 全1頁)

一日郵便屋さんになったQちゃんの様子を描く短い絵物語風の作品。アニメ第1作主題歌の歌詞がセルフパロディ的に使われてるのも面白いところでしょうか。
また同時期に発行された郵政 1966年7月夏季増大号にも、『手紙と人生』のコーナーに「かけ橋」という題の寄稿をしています。こちらも絵と文の構成なものの、内容は子供達から来るファンレターに関する藤子先生のエッセイ。
Neo Utopia Vol.52 「NUライブラリー・ナウ! 第8回」に紹介あり。


藤子不二雄ヘン集 世界めい作全集
初出:少年ブック 1966年9月号(全15頁 各話2頁 )

名作童話をパロディ化した7編(7巻)からなる短編作品群で、うち「ガリバー旅行記」「アラビアン・ナイト」「ロビンソン漂流記」の3作が藤本先生の筆です。
特に「ガリバー旅行記」については、後の『超兵器ガ壱號』のオチが先行して使われていて、なかなか興味深いです。そのほか「アラビアン・ナイト」にはどこかQちゃんと正ちゃんっぽいランプの精とアラジンが登場、「宇宙戦争」には本物のQちゃん(とウ○トラマン)もちょろっと登場します。
         
何度か再録されたことがあり、自分が確認できたなかでは以下の再録歴があります。

  • COM 1968年1月号(『マンガニカ(第5回)』で「白鯨」を引用)
  • 別冊少年キング 1970年4月号(『藤子ギャグフェスティバル』として『マンガ株式会社』と一緒に再録。表紙・総扉用に新規描き下ろしとタイトルロゴの改変有)
  • マンガ奇想天外 No.5 1981 MARCH(初出誌複写)
  • 藤子不二雄ファンクラブQ 付録Vol.2(現物未確認、マンガ奇想天外の複写?)

そのほか、『タカモリが走る』に劇中作として「ヘン訳 世界メイ作漫画」の題で、安孫子先生のパートのみ再録されているらしいものの未確認。


週刊パーマン(第1号)
初出:週刊少年サンデー 1967年5月14日(20)号(全9頁)

リストに載ってなかったり作画も大体が他者のものですが、「え 藤子不二雄」の表記と一部は実際に藤子先生の筆っぽいので扱います。
内容は企画ページ的なもので、藤子両先生の頭の中(趣味趣向)を覗く「パーマン大探検」、バードマンが潜む基地を図解した「パーマン本部基地」、タイトルそのまま「Qちゃん パーマンになる!!」、パーマン達の珍ニュースを集めた「パーマンタイムズ」の4部構成。
特に「Qちゃん パーマンになる!!」はQちゃんがパーマンになるものの、カバオとサブに正体をバラしたため頭がパーになってしまう(しかも突然)という衝撃の漫画。
ちなみにこのページの柱には「パーマンのひみつをもらすと、パーになっちゃうんだよ、Qちゃん!! こんどからは、気をつけてね!!」という一文が添えられています。もう手遅れなのでは…。

←一応この辺りの作画に関しては藤子先生によるものと思われます。


8㍉で時代劇をとるぞ!!
初出:週刊少年サンデー 1968年1月1日(1)号(全1頁)

『お正月特別プレゼント 1968年まんが家の頭』という企画より。1968年当時の藤子両氏のプロフィールと夢、そして藤子両氏が出会うまでの生い立ちが軽く描かれています。


およびでナイ子
初出:美しい十代 1968年1月号(全2頁)

ガン子似の少女ナイ子が様々な人物に対して、ちょっとブラックだったり皮肉的なイタズラを仕掛けていく様子を描いた全6編の1コマ漫画。
また同年3月号では安孫子先生による『忍者くの一子』という作品も掲載されています。
Neo Utopia Vol.38 裏表紙にカラーで再録あり。


殺し屋のお正月
初出:週刊少年サンデー 1970年1月11日(3)号(全2頁)

『ゲバゲバ大正月』という競作企画のなかの一編。
殺し屋の親分と正月の年賀に来た子分との生死を掛けた攻防を描く。正月の挨拶が、何故か殺るか殺られるか殺し合いに発展してしまうという不条理なギャグ短編。
Neo Utopia Vol.54 裏表紙にカラーで再録あり。



まん博・童話パビリオン&第2会場 藤子不二雄
初出:別冊マーガレット 1970年4月号(変型2頁×2)

『'70まんが大博覧会』という競作企画のなかの一編。
国内外の名作童話をパロディ化した漫景形式の「まん博・童話パビリオン」と、怪しいレストランに迷い込んだ少女を描いたミニ漫画ほか2編「第2会場 藤子不二雄館」の二部構成。後者のミニ漫画は人喰い人種などのカニバリズムネタが登場します。
Neo Utopia Vol.51 「NUライブラリー・ナウ! 第7回」に紹介あり。


天国と地獄
初出:週刊ぼくらマガジン 1970年8月11日(33)号(全2頁)

『異色ギャグ三人衆! 天国と地獄』という永井豪桑田次郎との競作企画のなかの一編。
(「三人衆…?」と思ったものの、安孫子先生はノータッチっぽいので、まあ…。)
高速で漫画が描けるようになる「はやがきインク」を手に入れた売れっ子漫画家(天国)と売れない漫画家(地獄)の顛末を描く。
ついでに書いておくと、永井豪は「女湯にまぎれこんだ男(天国)」と「男湯にまぎれこんだ女(地獄)」、桑田次郎はタクシーに撥ねられて死に天国に行くも、寝てたため地獄(現世?)に落とされた睡眠不足の漫画家(おそらく桑田自身)の漫画を描いています。


事前運動
初出:東奥日報 1972年1月1日付(カット)

『まんがスター7』という競作企画のなかの一編、『新オバケのQ太郎』の面々が登場。
将来代議士に立候補するからと、みんなにガムを配る木佐くんの1コマ漫画。
この競作企画は風刺がテーマらしく、他にはちばてつや札幌五輪スケートリンクで釣りをしようとする国松を、赤塚不二夫核家族化するバカボン一家を、川崎のぼる「黒い霧(賄賂)」を使って消える大リーグボール2号を、谷岡ヤスジは沖縄に上陸して戦闘機を追い返すムジ鳥、ジョージ秋山はチリ紙交換ならぬドル紙交換をする風太郎、水木しげるは地上が”公害都市”として地獄の管轄になったと鬼太郎に報告する鬼のイラストをそれぞれ寄稿しています。
この企画の中だとこれが一番衝撃的な気がする…(「黒い霧事件」が元ネタの模様)
Neo Utopia Vol.54 ReMIXにも再録あり。


オバQ縁日横丁
初出:中日新聞 1975年1月1日付(カット)

『マンガ昭和50年まつり』という競作企画のなかの一編。
お祭りを舞台に、当時の藤子両氏のキャラクターがほぼ総出演の愉快な漫景。フータくんや変太夫なんかがいるのもポイントが高いです。
こちらはお祭りがテーマ。田河水泡は「のらくろ演奏会」、園山俊二は「不況おみこし」、萩原賢次は「戦後意外史行列」といった作品を寄稿しています。
Neo Utopia Vol.54 ReMIXにも縮刷で一応再録あり。


のらくろよ永遠に
初出:丸 1984年9月号(全4頁)

合作という扱いですが藤本先生はドラえもんパーマンといった一部キャラクターの作画を担当しているのみで、漫画自体は安孫子先生が執筆しています。
内容は藤子両氏が『のらくろ上等兵』と『新寶島』に出会ったときの衝撃と、1981年に行われた”のらくろ50年完結を祝う会”の回想。『まんが道』を若干彷彿とさせます。


ゴンスケ
初出:東京タイムズ&北海道新聞 1970年9月06日付~9月27日付
(毎週日曜掲載 1話1頁 全4回)

分類的には安孫子先生の作品なもののついでに紹介。F作品の迷脇役であるゴンスケを主役に据えた連載漫画(…といっても1話1ページで全4回しかないのですごく短い)
内容は掲載当時直近の時事ネタを漫画にしたもので、大阪万博(①万国博の巻)、公害(②公害の巻)、藤圭子の『命預けます』(③歌手志望の巻)、ドッキリカメラ(④ガールフレンドの巻)といったネタが扱われています。
ある程度当時の時事を分かっていると楽しめる作品です。

そのコーガイとかいうやつ、ぶんなぐってやりたい!



最後に
今回、主に60年代後半から70年代くらいものを確認しましたが、大体はどの巻に収録するか困りそうな短い短編・漫景・カットのようなもの、あとは安孫子先生など他者の描いてる割合がそこそこ高めの作品がほとんどいった感じがしました。また全集刊行後(もしくは刊行中)に発見されたものもあるようで、いずれも未収録にはそれなりの理由がありそうです。

というわけで読んでみて、そこそこ面白かったものを選んでいくつか紹介してみました。
今後、何らかの単行本や、F全集の補巻やA全集のようなものに収録されたら良いですね。
今のとこ、そういったものが出そうな気配はほぼないけど!


参考文献
米沢嘉博(2014)『藤子不二雄論』河出文庫
藤子不二雄ファンサークル ネオ・ユートピア(1986-)『藤子不二雄ファンサークルマガジン Neo Utopia』
そのほかネット上の情報など